ゲイバーで働く大学生を中心に、彼を慕うホモセクシュアルの高校生や二人の女の子ら四人の若者たちを描く青春ドラマ。「夕辺の秘密」(89)でPFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワード89グランプリを受賞した橋口亮輔の監督・脚本による劇場デビュー作。主演の樹を演じたモデル出身の袴田吉彦をはじめ、四人の男女はいずれも本作が映画デビューとなった。
離婚した両親と別れ一人東京で暮らす樹たつるは、昼間は大学に通いながら、夜はアルバイトとしてゲイバーで男たちに身体を売っていた。そんな彼に同じクラブで働く高校生の信や、大学のサークルの先輩・頼子らがそれぞれに想いを寄せるが、樹はそれを拒むわけではなく、かといって求めるでもなかった。信は彼に好意を寄せる幼なじみのあつみの助けを借りてバイト先から学校に通っていたが、ホモセクシャルであることから両親と対立し、しばらく樹の部屋に泊めてもらうことにする。樹のアパートを訪ね信と鉢合わせした頼子は、樹を自宅に招く。彼女の家で、彼女の父親が先日の自分の客であったことを樹は知り、居心地の悪い思いをしながら知らぬふりをしていたが、食事中に思わず吐いてしまう。