警視庁捜査二課には重要な部門が二つある。一つは「サンズイ」(汚職の隠語。汚の偏であるさんずいから)と呼ばれる贈収賄事件を専門に摘発する「ナンバー」こと二課の花形・第四(第一班~三班)、第五(第四班~六班)、第六(企業四係~六係)の知能犯各部門。もう一つは、汚職の情報を集め、その裏取りを行ってナンバーに案件を引き渡す第一知能犯情報係、通称「情報」。
1999年、情報係の主任が、外務省汚職疑惑の調査を元政治家水野清から依頼される。翌年開催される九州・沖縄サミットは、物品納入は競争入札のはずだが、外務省役人と癒着した業者に不当に落札されて仕事が取れない、その癒着役人らは代議士より贅沢な暮らしをしている、との苦情・内部告発があり、水野はもし事実なら、外務省の役人主導で談合(官製談合)に相当すると考えた。告発者は業者に転職しているものの元外務省のノンキャリの出身だった。
情報係主任警察官が告発者を事情聴取。このとき明らかになった利益供与手段は役人への金券(ビール券やタクシーチケット)贈答であり、癒着役人だとして浮上した名前は欧州局西欧第一課課長補佐・浅川明男であった。しかし、同社の営業員の追跡聴取により「外務省の三悪人」の存在があきらかになり、当サミットのロジスティクスを掌握しているのは浅川ではなく後任の松尾克俊であることが判明する。以降、本書の焦点は松尾に移り、その女性関係(愛人や囲いのマンション)、十数頭におよぶ競走馬所有[13]、複数銀行の虎ノ門支店と、数千万円単位で現金入金(資金源の出所不明)、銀行口座からクレジットカード決済としかなく具体的な使途目的が不明な支出等へと捜査が展開する。