山本周五郎原作による小説「季節のない街」を脚本にも参加している「赤ひげ」の黒澤明監督が24作目にして初めて手掛けたカラー作品のメルヘン・ムービー。「どですかでん、どですかでん」と架空の電車を運転して街を1周する六ちゃんの目を通し、貧民街に生きる人々の人間模様をユーモラスかつ幻想的に描く。
電車馬鹿と呼ばれている六ちゃんは、てんぷら屋をやっている母のおくにさんと二人暮しである。六ちゃんの部屋には、自分で書いた電車の絵がいたるところに貼りつけてあった。彼は毎日「どですかでん、どですかでん」と架空の電車を運転して街を一周する。それが彼の仕事なのである。六ちゃんを始めとする、この街の住人たちは一風変った人たちばかりだった。日雇作業員の増田夫婦と河口夫婦がいる。二人の夫はいつも連れ立って仕事に出、酔っぱらっては帰ってくる。二人の妻も仲がよかった